はじめに:出会いがプロジェクトの種になる
2025年春、スリランカを訪れた私は、一人の特別な人物と出会いました。
元スリランカ総務大臣。日本語学校に通うため1980年に来日し、代々木に住んでいたという親日家です。1994年には日本とスリランカの通訳として活躍し、その後20年にわたり政府系の仕事に携わり、議員を経て大臣に就任。現在はそのキャリアを手放し、自らの情熱を注ぐ「ホテル事業」に専念しています。
この出会いが、日本とスリランカの架け橋となる新しいビジネスのはじまりでした。
「スリランカ人を日本に」――人材と不動産の掛け算
彼の構想は明確でした。
「スリランカ人を日本に送り出し、一緒にリフォーム会社を立ち上げたい。」
その第一歩として、株式会社ハーミットクラブデザイン(弊社)でスリランカ人の受け入れを行い、彼らと共にリノベーションホテルを作るという計画が動き出しました。候補地は、スリランカ人にとって魅力的かつ認知度のある観光地を想定しています。
- 箱根
- 熱海
- 伊豆
- 那須
- 日光
- 鬼怒川
- 代官山(なぜか含まれていますが、外国人には静かで洗練された印象があるようです)
優しさと洞察力に学ぶ、国を超えたビジネスの基本
彼との出会いで強く印象に残ったのは、人柄と行動力です。
私の飛行機が2時間遅延したにもかかわらず、彼は空港で待っていてくれました。
「スタッフだけで初めてのスリランカは不安だろうから」
その気遣いに、ただのビジネスパートナーではない、信頼できる人間性を感じました。
さらに驚いたのは、コロンボ空港の拡張工事を担当している大成建設の話題を振ってきたこと。私が以前、大成建設に関わっていたことを調べてくれていたのです。相手を知ろうとする姿勢と、徹底した事前準備。政治家として、経営者として、一流の視座を感じさせる人物でした。
スリランカのホテル事情から見る、日本との違いと可能性
彼に案内されたのは、海の目の前にあるホテル。
エントランスを抜け、開放感のある半屋外ラウンジを通り抜ける。空間は風と光に満ち、自然と一体化した設計が印象的でした。
宿泊客は9割以上が欧米(主にヨーロッパとオーストラリア)からの旅行者。日本人はほとんどおらず、非常に珍しがられました。
ホテルの内装は、チークやマホガニーといった高級木材がふんだんに使われており、自然素材の力強さと温かみが伝わってきます。人工建材の少ない環境では、タイルや織物、塗装によって空間が構成されており、どこか日本の昭和建築を思わせる趣も。
ただし、ディテールを見ると、シャワーブースのガラスに隙間があったり、巾木が途切れていたりと、日本では考えにくい粗さも。日本の建築が極端に精密であり、素材の収縮や狂いを嫌うがゆえに自然素材を避けている理由を再認識させられました。
投資家視点で見る、スリランカ×日本のホテル戦略
この旅を通じて見えてきたのは、スリランカの観光産業のポテンシャルです。
欧米人が多く訪れるにもかかわらず、日本人の進出は極めて少ない。これは、ブルーオーシャンであるとも言えます。
一方で、日本には空き家や遊休ホテルの再活用といった課題があり、リノベーションの需要が高まっています。
その2つを繋ぐのが「スリランカ人職人」と「日本のホテル経営者」の協働。人材交流、技術研修、文化理解のもとに、新しい国際的ビジネスが生まれる余地があります。
このプロジェクトは、単なる不動産投資ではありません。
人材育成 × 国際協業 × 地方創生という、複合型の価値を持つ投資になる可能性があります。
まとめ:世界に触れ、視野を広げる投資家へ
今回の旅を振り返って、得た学びは以下の3点に集約されます。
投資は「人」から始まる
信頼できるパートナーとの出会いが、すべての起点になる。
日本基準を疑うことで、世界の建築が見えてくる
完璧ではなく、素材と共生する設計も魅力のひとつ。
異国にこそ、投資の種がある
スリランカの観光、建築、人材に触れることで、新しいビジネスモデルが見えてくる。
次回は、スリランカ国内のリバーサイドにあるビラ用の土地を視察予定。
静けさと自然に囲まれた場所で、世界に開かれた“滞在体験”の可能性を探ります。
——世界に投資するとは、出会いに投資することかもしれない。
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