IoTを民泊に導入して失敗した実体験と学び

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実際にやってみて、、、

民泊運営において、最先端の技術を活用することは、ゲストに新しい体験を提供し、宿泊施設の魅力を高める手段として注目されています。私もその波に乗り、AIスピーカーやIoTデバイスを導入し、ゲストに快適で便利な滞在を提供しようとしました。しかし、実際の運営を通じて、技術の導入が必ずしもプラスに働くわけではないことを痛感しました。このブログでは、私の具体的な実体験を通して、IoTを民泊に導入して失敗した理由とそこから得た学びを共有します。

IoT導入の背景と期待

民泊を始めた当初、私は最新技術を駆使して、他の施設との差別化を図りたいと考えました。AIスピーカーのアレクサとGoogleを導入し、音声での操作が可能なスマートデバイスを活用することで、ゲストが照明をオンオフしたり、エアコンの温度や湿度を自動で制御できるようにしました。これにより、ゲストは簡単に快適な環境を整えられるはずでした。

導入当初の期待は非常に高く、ゲストからも「未来的な体験ができる」との声が上がりました。技術の力で宿泊体験を向上させ、ゲストの満足度を高めることができると確信していたのです。

実際に起きた問題

しかし、実際に運営を進めると、さまざまな問題が浮き彫りになってきました。以下に、具体的にどのような問題が発生したのかを紹介します。

  1. ゲストの過剰な期待と現実のギャップ 技術の導入により、ゲストの期待は非常に高まりました。多くのゲストが新しい技術を試してみたいと期待していましたが、実際には操作方法がわからなかったり、デバイスが思ったように動作しなかったりといった問題が頻発しました。例えば、音声コマンドが正確に認識されなかったり、スマート照明が意図した通りに点灯しなかったりすることがありました。 こうした問題は、ゲストにストレスを与え、「未来的で便利な体験」が「不便で使いにくい体験」に変わってしまうことに繋がりました。結果として、技術に対する期待が高かった分、不満も大きくなり、ゲストの満足度は低下してしまいました。
  2. 技術の複雑さと使い勝手の悪さ 民泊は基本的に初めて訪れる場所であるため、ゲストが施設の使い勝手に慣れていないことが多いです。私の施設では、IoTデバイスの操作が複雑すぎて、多くのゲストが戸惑う場面が見られました。例えば、エアコンの自動制御システムは、一見便利そうに見えますが、設定が複雑でゲストが自分で調整できないことが多々ありました。 また、ゲストの中には高齢の方やテクノロジーに疎い方もおり、そういった方々にとっては、AIスピーカーやスマートデバイスの操作は非常に難しく、煩わしいものとなってしまいました。技術が多くのゲストにとって直感的に使えるものでない場合、施設の価値を下げてしまうことになります。
  3. 人間味の欠如とサービスの冷たさ 私の民泊施設は、古民家をリノベーションしたもので、自然と調和した落ち着いた空間を提供することを目指していました。しかし、IoTデバイスの導入により、施設全体がデジタル化され、リゾートホテルや古民家の「温かみ」や「自然を感じる雰囲気」が薄れてしまいました。 ゲストがリゾート地で求めるのは、自然の中でのリラックスであり、都会の喧騒から離れることです。AIスピーカーやIoTデバイスの導入がかえってその自然の良さを損なうことが分かり、技術の使い方を見直す必要があると感じました。

失敗から学んだこと

IoTを導入して失敗した経験から、いくつかの重要な学びを得ることができました。これらの学びをもとに、今後の民泊運営に活かしていくことが必要だと感じています。

  1. 自然体験の素晴らしさを最大限に引き出す 民泊施設において、ゲストにとっての一番の魅力は、自然との触れ合いです。最新技術を導入することで、デジタル化された便利さを提供するのも一つの方法ですが、自然の美しさや静けさを体験することが、ゲストにとって最も価値のある体験となります。自然環境を最大限に活かし、ゲストにリラックスできる空間を提供することが大切です。
  2. 時間の大切さを再認識させる体験を提供 忙しい日常から離れ、民泊で過ごす時間は、ゲストにとって特別なものです。朝日を浴びながらのヨガや瞑想、自然散策や焚き火を囲んでのリラックスといった体験を通じて、ゲストが時間の大切さを再認識できるような環境を提供することが重要です。デジタル化された便利さではなく、時間を贅沢に使う体験を通じて、ゲストに充実感を与えることが求められます。
  3. デジタル化で失われたアナログの魅力を再現 デジタル技術の導入により、失われがちなアナログの魅力を再評価し、これを積極的に取り入れることが必要です。手作りのアメニティや地元の素材を使ったインテリア、古き良き時代を感じさせる家具や雑貨などを活用することで、デジタルから離れた温かみのある空間を演出します。ゲストにとって、技術に頼らない心地よい滞在を提供することが、施設の価値を高め、リピーターの獲得にも繋がります。

結論

私の経験から学んだことは、AIスピーカーやIoTデバイスを導入することが、必ずしもすべての民泊施設にとってプラスになるわけではないということです。最新技術の導入は、適切な使い方とゲストのニーズに合った方法で行われるべきです。特に自然を楽しむための施設では、デジタル技術を過度に導入することよりも、自然の魅力を最大限に活かした空間作りが重要です。

ゲストが求めるのは、技術的な便利さよりも、心地よい滞在体験です。技術の導入にあたっては、過剰な期待を持たせないようにすること、そして何よりも「人間らしいサービス」を忘れないことが大切です。これからも、ゲストにとって価値ある体験を提供するために、技術とアナログの融合を目指し、民泊運営を続けていきます。

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