~建設費高騰時代のホテル投資戦略と、現場で感じたリアルな国際感覚~
はじめに:日本と世界で、金銭感覚がここまで違うとは
私はここ数年、バングラデシュ、スリランカ、フィリピン、ドバイといった国々を訪れ、地元のデベロッパーや元政府関係者、不動産プレイヤーたちと直接話す機会を持ってきました。
- バングラデシュの地元大手デベロッパー社長との面会
- スリランカの元住宅都市計画大臣との意見交換
- フィリピン・マニラでの地場不動産会社の案内
- ドバイでの高級ショールーム・不動産ギャラリーの視察
これらの現場で私が一番驚いたのは、「価格に対する許容度」と「リスクの前提」の違いです。
日本人オーナーが驚くような建設費や設計費も、海外の投資家にとってはむしろ“想定内”。
彼らの多くがこう語っていました。
「この金額で完成するなら、十分納得できる」
対して、日本人オーナーは“そもそも価格を下げなければ利回りが出ない”という前提に立っています。
このギャップが、ホテル開発や不動産投資の世界において、今後ますます大きな意味を持つようになると、私は肌で感じています。
バングラデシュで感じた「完成しない」リスクの現実
バングラデシュ・ダッカで、大手デベロッパーの社長と会食した際、彼はこう語っていました。
「こちらでは建築が始まっても、途中で止まることがある。資金不足や行政トラブルはあるものだ」
そのため、土地取得から完工までを一気通貫で担えるゼネコンや、設計・監理が確実なプロジェクトは、圧倒的に信頼され、資金が集まりやすいというのです。
日本では「設計したら建つのが当たり前」という感覚ですが、世界ではそれが通用しません。
だからこそ、日本のプロジェクトは“高くても安全な投資先”と見なされるのです。
スリランカの元大臣と話して見えた「日本の強み」
スリランカの元大臣であり、現ホテルオーナーと会談した際のこと。
彼は日本のプロジェクト事例(建設現場の清潔さ、工程管理の正確さ、ものづくりに対する姿勢)に深く感銘を受けたと話していました。
「日本の現場は、ちゃんと管理されている。日本人のものづくりに対する姿勢が好き」
この印象は、海外の投資家にとって“価格よりも安心感”を強く印象づける要素になっていると改めて実感しました。
その場で彼が語ったのが、「価格が高いことは問題ではない。問題は、それに見合う完成が得られるかどうかだ」という言葉です。
フィリピンの不動産現場で見た「現金優先主義」
フィリピン・マニラでは、地場の不動産プレイヤーが案内してくれた複数のプロジェクトを見学しました。
そこでは、現金一括払いの購入者が優遇され、分割払いの投資家は、後回しにされる現実がありました。
要するに、リスクを背負いたくないデベロッパーが、現金投下できる相手としか本気で組まないという構造です。
日本では考えられないような、”資金がなければ作らない” という明快な姿勢。
その分、資金力がある投資家にとっては、しっかりリターンの見込める市場でもあるのです。
ドバイでのショールーム巡りと「空間への投資感覚」
ドバイでは、商業施設や高級レジデンスのショールームを回りました。
圧巻だったのは、「空間の完成予想CG」ではなく、実物の1/1モデルや体験型ブースを整備している点です。さらにそれが、壮大なスケールの計画だったんです!
それはまるで“空間体験の美術館”。
「ここに住める」「ここに泊まれる」という体験が、価格感覚を納得に変えているのです。
このあたり、日本のホテル投資ではまだまだ弱い。
空間にお金を払うという文化は、ホテルの方が圧倒的に飲食より強いのに、そこへの表現投資がまだ足りていないと痛感しました。
日本人オーナーが陥る「利回りの罠」
日本人オーナーがよく言うセリフ。
「これじゃ利回りが合わないから、建設費をもっと抑えてくれ」
しかし、そこで“価格”ばかりに目を向けると、
- 雰囲気がない
- 客単価が上がらない
- 結局稼働率も上がらない
という結果になり、利益が出ない→利回りが出ないという悪循環になります。
海外投資家は逆です。
「価値ある空間をつくって、価格を上げよう」
という発想で、空間から収益を作るという感覚を持っているのです。
いま本当に必要な「設計×運営」戦略
高くても完成する。完成すれば価値がある。だから価格に納得できる。
これを支えるには、「単なるデザイン」ではなく、「事業として成立する空間設計」が求められます。
私たちが提案するのは、次のような連携型戦略です。
- 初期から運営計画と動線・面積配分を連動させた設計
- 顧客の心を動かす世界観・ブランディング設計
- 価格に見合う体験を提供し、単価とレビューを引き上げる仕掛け
最後に:海外の感覚が、日本の未来を動かす
日本のホテル投資は、いま大きな転機を迎えています。
- 海外オーナーが次々と参入してくる
- 金銭感覚の差が、建設相場にも影響を及ぼす
- 安さで戦う時代から、“価値で選ばれる”時代へ
そのときに必要なのは、「安く建てること」ではありません。
高くても選ばれる空間を、どう設計・運営するか
この一点です。
もしあなたが、日本人としての常識にとらわれすぎていると感じたら、
ぜひ一度、海外の感覚を取り入れた新しいホテル開発のあり方を、一緒に考えてみませんか?
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