はじめに:2024年、展示会は民泊一色だった
昨年の展示会では、マンション一棟を活用した民泊事業の相談が多数を占めていました。
特に目立っていたのは、中国人オーナーによる投資案件です。
- 中古の一棟マンションを購入して民泊化
- インバウンド需要を見越した内装設計
- 運営代行込みで収益を最適化するモデル
このように、利回りや短期収益を狙った民泊事業が主役だった印象です。
2025年:投資ブームの熱が落ち着き、実業ベースの宿泊業へ
民泊の相談は減少、ホテル・旅館の改装相談は継続
2025年の展示会では、民泊の相談は明らかに減少しました。
一方で、ホテル・旅館の改装やブランディングの相談は昨年同様に継続して存在しています。
これは、民泊が衰退したのではなく、市場が落ち着きを見せ、継続性のある宿泊業に目が向けられ始めたことを示していると言えるでしょう。
改装・リブランドが注目される背景
民泊に対する懸念の顕在化
- 消防法や用途変更などの法規制のハードル
- 運営トラブル、近隣クレーム、清掃・管理負担
- 期待していた収益に届かないケースの増加
民泊は想像よりも**“手離れが悪いビジネス”である現実**が認識されはじめています。
中規模・地域ホテルのブランディングニーズ
ホテルの新設は難しくなっている一方で、
- 客室単価を上げたい
- 他施設との差別化を図りたい
- 若い世代やファミリー層を呼び込みたい といった要望を持つホテルオーナーが増えており、改装による価値の再創出がテーマになっています。
空間よりも中身が問われる時代へ
体験を空間で表現する設計へ
現在の宿泊業界では、単に内装が美しい空間ではなく、「そこで何ができるか」が問われています。
空間そのものが“体験の器”であるという考え方
具体的には、
- サウナ、ヨガ、瞑想といった滞在中のアクティビティ
- 地元の食文化やクラフト体験などの地域密着型プログラム
- 自然と調和する音・光・風の設計
- 滞在時間を“消費”ではなく“充足”として演出する導線設計
など、中身(コンテンツ)から空間を設計するアプローチが増えています。
カフェ・バー・ラウンジの価値が再評価されている
ホテルの共有スペースにおいて、飲食業態の導入が再び注目を集めています。
- カフェやバーは宿泊者の満足度を高めるだけでなく、外来客を呼び込む“集客装置”としても機能
- ラウンジスペースは、コワーキング、休憩、軽飲食の場として滞在価値を高める
以前はコストセンターとされがちだったこれらの空間も、うまくデザイン・運営することでホテルの魅力を引き上げる資産になりつつあります。
今、ホテルオーナーが見直すべき視点
空間刷新だけでなく、“過ごし方”を設計する
- 「どんな体験を提供したいか?」から設計を始める
- ブランドとしての世界観を、空間全体で一貫させる
- 客室以外の時間の価値をどう高めるかを考える
- スタッフ・オペレーションと連動した動線設計を行う
まとめ:民泊ブームの落ち着きが、ホテル業界にもたらす追い風
2024年の民泊投資ブームは、短期収益を追いかけた市場の熱を象徴していました。
そして2025年は、その反動として、本来の宿泊業の価値が見直され始めた年でもあります。
継続性、体験性、ブランド性――
これらを備えた宿こそが、これから選ばれていく時代です。
今こそ、自社のホテル・旅館を**「泊まる場所」から「記憶に残る滞在体験の場」へと再構築するタイミング**ではないでしょうか。
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