観光客を集めるために、一番重要なポイントは、“日常の風景に価値を見出し、名所として伝える”ことです。なぜなら、誰もが見過ごしている風景こそが、他人にとっての“行きたくなる場所”になる可能性を秘めているからです。
そこで不満要素の原因の一つに、「なぜ自分の地域には観光客が来ないのか分からない」という思い込みがあります。それを“観光名所をつくる”こととして捉えるうえで大切なポイントは、
① 日常の中にある魅力を見つける
② その魅力にネーミングと物語を与える
③ 多くの人に届ける仕組みを作る
です。これを実現する方法として5つあります。
① 地域の風景を写真や映像で客観的に見て再評価する
② 地元の伝承や文化、自然と結びつけて魅力を言語化する
③ SNSやWebサイトで写真・ストーリーを発信する
④ 撮影スポットに案内板や駐車場など受け皿を整備する
⑤ 地元の宿泊・飲食施設と連動させて「滞在の目的」に転換する
上記のポイント、手法を活用することで、筆者が実際に関わる地域や施設では、「写真を撮りたいから泊まりたい」という行動につながり、実際に宿泊客が増加しています。重要なポイントとして、ぜひ覚えておきましょう。
はじめに:何もない風景に、なぜ人は惹かれるのか?
北海道・美瑛を訪れて、私が心を奪われたのは「何もない田園風景」と、そこに静かに佇む一本の木でした。地元の人にとっては日常である風景が、なぜ全国から、そして海外からも観光客が押し寄せる“名所”になっているのか?
この記事では、美瑛で私が実際に感じた驚きと、それがどう名所化されたかを紐解き、同様の仕組みを奄美や千葉など他の地域でも応用できないかを考察していきます。
美瑛にあったのは、ただの風景だった
美瑛町には、有名な「ケンとメリーの木」「セブンスターの木」「クリスマスツリーの木」など、名前のついた“一本の木”がいくつもあります。これらは元々、農地の中に自然と存在していたただの木々です。
それがなぜ観光名所になったのか?理由は明確です。
- 1970年代にCM(例:日産スカイライン)やタバコのパッケージに採用されて全国に拡散
- 撮影に適した構図や景観として写真家たちが注目
- 地元行政が案内板や駐車場など受け皿を整備
- ネーミングによる記憶装置化(どんな木かより“名前”で人は語る)
つまり、観光名所とは「自然+ネーミング+発信+整備」でつくられるという好例です。
観光名所化の仕組みとは?
私たちが見逃しがちな“日常の風景”こそ、観光資源の種です。
- 何気ない風景に気づく目
- 心を動かす名前(ネーミング)と物語を添える
- 多くの人に届ける発信力(SNS・Web・写真)
- 訪れるための整備(アクセス・導線・マナー)
この4つが揃ったとき、「ただの風景」は「行きたくなる場所」に変わります。
他地域にも応用できるか?
▼ 奄美大島の場合
奄美には、海・山・集落・祭りなど、まだ発見されていない風景が無数にあります。けれど、観光客の数は限られています。その理由のひとつは、「誰かが行きたくなるような見せ方」が足りないからではないでしょうか?
- 例:「舟が並ぶ朝の漁港」「夕暮れのサトウキビ畑」など絵になる瞬間がある
- ネーミングや物語とセットにすることで、SNSやブログに拡散しやすくなる
▼ 千葉・房総半島の場合
東京から近すぎて“泊まらない”とよく言われる千葉。でも、週末は必ずアクアラインが渋滞している=人の流入はあるのです。
- 田園風景や里山の中に、誰も知らない“構図になる風景”が埋もれている
- 「東京湾のベランダ」「菜の花の大河」など視点を変えたネーミングで注目される可能性あり
実行すべき3つのステップ
- 発見する
- 何気ない景色の中に、絵になる瞬間や構図を探す
- 名付ける・物語を与える
- 人の記憶に残る名称と、背景となるストーリーをつける
- 拡散する
- SNS、Web、写真コンテストなどを通じて多くの目に触れさせる
観光地になって終わり、ではない
観光名所が生まれても、地域にお金が落ちなければ意味がありません。
- 滞在時間を延ばすための飲食・宿泊の設計
- 地元産品や文化体験との接続
- 景観保護とマナー設計
つまり、観光名所は「入口」であり、「まちづくり」の第一歩に過ぎません。
最後に:風景を資源に変える力
美瑛の一本の木は、誰かが見つけて、名前をつけ、広めたからこそ観光名所になりました。あなたの地域にも、まだ名もない絶景があるかもしれません。
発見し、名付け、届ける。
この3つを意識するだけで、地域は“誰かが行きたくなる場所”に変わります。
私たちは、そうした観光ブランディングや宿泊施設の設計、地域の魅力づくりをお手伝いしています。自治体や観光協会、ホテル事業者の皆さま、ぜひご相談ください。
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