なぜ発展途上国に優秀な設計者が育つのか?日本の人手不足を解決するヒント

ホテル・別荘の設計・建設・運営ノウハウ

はじめに──このブログは何から生まれたか?

私が今回この記事を書こうと思ったきっかけは、実際にバングラデシュの設計者たちと面談を行った体験にある。彼らのスキル、仕事への姿勢、そして社会的背景を知ることで、私たちが抱える建築設計の課題に対する新たな視点が見えたのだ。

今後、私たちが受けていくことになるかもしれないホテル、ショッピングモール、高層マンション、映画館、複合施設などの海外プロジェクト──そうした仕事をどうすれば実現できるか。その鍵は、人材の視点を海外に広げることにあると感じた。この記事では、そのリアルな可能性を紐解いていく。

目次

結論:国を超えた建築人材の活用が、日本の未来を切り拓く

  • 日本の建築業界における人手不足は「スキルを持つ人材が足りない」ことが本質。
  • 都市開発が進む国では、設計スキルの高い人材が育ちやすい。
  • こうした海外人材と連携することで、日本の課題解決だけでなく、ホテルやショッピングモールなどの大型案件の受注にもつながる。

成長する国の設計者は、実務で鍛えられる

都市開発=即戦力を生む育成装置

バングラデシュのように都市開発が国家的に進められている国では、若手設計者が学生のうちから実務に触れることができる。現場主義が徹底され、設計者が育ちやすい環境が整っている。

▷ ポイントまとめ:

  • 都市開発の加速が、設計実務の機会を生む。
  • 若手も実践で鍛えられるため即戦力化が早い。

ソフトウェアスキルが“基礎能力”として定着

現地の設計者たちはAUTOCAD、REVIT、SKETCHUP、LUMION、3DSMAXなどの操作が当然のようにできる。日本では「できればすごい」とされるスキルが、彼らにとっては“設計者の最低条件”である。

▷ ポイントまとめ:

  • 主要なBIM/CADソフトを扱えるのが標準スキル。
  • 設計スキル=ツール操作力ではないが、それが前提条件になっている。

高い報酬と副業文化がモチベーションを上げる

平均月収3〜5万円が相場の国でも、8〜12万円を稼ぐ設計者たちは珍しくない。英語も堪能でプロジェクトマネジメントも行える人材が揃っている。副業や兼業も一般的で、柔軟な働き方が定着している。

▷ ポイントまとめ:

  • 実力主義が浸透し、能力が正当に評価される。
  • 複業によって多様な案件に携わる機会が多い。

日本の建築業界──スキルと経験の空洞化が進む

新築からリノベーションへのシフトが若手を遠ざける

現在の日本では、10階建て以下の中層設計やリノベーション、内装系の需要が中心。高層ビルやホテル、ショッピングモール、映画館などの新築設計は少なく、若手が“スケール感のある”設計に関われる機会が減っている。

▷ ポイントまとめ:

  • 若手の育成機会が構造的に不足している。
  • 大型新築プロジェクトの実績を積む機会が乏しい。

ツール習得は“個人任せ”の時代に

日本の設計事務所では、BIMやCGツールの導入が進んでいないことも多く、スキルアップは自己投資・自主学習に依存している。このことがスキルの差を広げている。

▷ ポイントまとめ:

  • ソフト未導入企業が多く、育成体制が整っていない。
  • 自主学習前提の環境では、モチベーション格差が開く。

「空間の演出」こそが今の評価軸

設計よりも、“体験を設計する”空間演出の方が価値とされる現在。図面を描けるだけでは戦えず、コンセプト設計やブランディングの力が重要視されている。

▷ ポイントまとめ:

  • 図面力よりも、世界観・コンセプト構築が重視される。
  • 単純なスキルではなく“価値創造力”が問われる。

人材交流が生む、新しい建築のかたち

設計スキルは“世界のどこか”に存在している

人手不足の本質は、地域における“スキルの偏在”である。需要と供給が地理的に合っていないだけで、スキルを持った人材は確実に世界中にいる。

▷ ポイントまとめ:

  • 設計人材の不在ではなく、“流通不足”が問題。
  • オンラインで繋げば、人手不足は解消できる。

バングラデシュ人材は“共創”のパートナーになり得る

英語・ソフトスキル・管理能力・柔軟性を備えた人材が多く、コストパフォーマンスにも優れる。外注ではなく、プロジェクトベースで共に創る“チーム”という認識が適している。

▷ ポイントまとめ:

  • バングラ人材は、単なる外注先ではなく共創相手。
  • ホテルやモールといった大型施設の案件にも対応可能。

日本の受け入れ体制は変わりつつある

在留資格の整備やリモート技術の進化により、海外人材との協働はより現実的になっている。特に建築・IT分野は国際的なチーム構築に適している。

▷ ポイントまとめ:

  • 建築・技術系分野は国際人材受け入れが進んでいる。
  • リモート・クラウド技術で距離の壁が低くなっている。

これからの設計者に必要なチカラとは?

“共感”し、”伝える”設計者が求められる

顧客と対話し、ニーズを設計に落とし込む力が問われる。語学や文化理解も設計力の一部として評価されるようになる。

▷ ポイントまとめ:

  • 単なる図面作成者ではなく、コミュニケーターであること。
  • 意図を伝え、共感を得る力が設計の成果を左右する。

マネジメント力が未来の設計者を変える

複数国籍のチーム、異なる働き方、時差と文化の違い。これらをまとめるマネジメント力が、ホテルや大型施設のプロジェクト成功の鍵を握る。

▷ ポイントまとめ:

  • グローバル設計には進行管理能力が不可欠。
  • 設計者も“プロデューサー”になる時代。

ソフトの操作以上に、「何を作るか」が問われる

ツールを使えるだけでは設計者ではない。空間の意味、価値、文脈を考え、提案できる力が必要とされる。

▷ ポイントまとめ:

  • 技術よりも、構想・コンセプト力が差を生む。
  • 空間を通して伝える”力が最終的な武器になる。

建築を通じた社会変革──小さな設計事務所でもできること

外注ではなく「共創」こそがカギ

海外スタッフをただの請負先と見るのではなく、プロジェクトパートナーとして共に育てる意識が、成果にもつながる。

▷ ポイントまとめ:

  • 継続的な関係構築が生産性と品質を上げる。
  • 育てながら共に成果を出す設計チームへ。

グローバル設計チームで地方から世界へ

地方の小規模事務所であっても、リモートで海外人材を活用し、ホテル、映画館、ショッピングモール、高層マンション、医療施設、公共建築などの大型案件に対応できる時代になってきている。

▷ ポイントまとめ:

  • 地方にいても世界レベルの案件に携われる。
  • 国際連携でスケールのある設計が実現できる。

【結論】

建築設計は、もはや“国の中だけ”で完結する仕事ではない。人材の偏在を解消する鍵は、“国際的な能力流通”にある。

  • 日本の課題=人手不足は、世界の可能性で解決できる。
  • バングラデシュなど発展途上国の優秀な設計人材との連携で、未来の建築ビジネスの新たな扉が開く。
  • 特にホテル、ショッピングモール、映画館、高層マンション、複合施設などの海外案件を取るには、この視点が極めて重要だ。

今こそ、「どこの国の人が」「どの分野で強いか」を冷静に見極め、戦略的に組み合わせていくことが必要だ。

【行動の呼びかけ】

  • 建築事務所の方へ: 海外人材との連携モデルに興味がある方は、ぜひご相談ください。
  • 建築学生・若手設計者の方へ: 国際的なキャリアを見据えたスキル構築を始めましょう。
  • 建築系ビジネスを構想中の方へ: この視点を活かした新たなモデルを一緒に考えてみませんか?

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