実際にやってみて3年、、、
ホテルや旅館のビジネスを始める際、運営特化型か不動産資産型かを選ぶのは非常に重要な決断です。それぞれのビジネスモデルには異なるメリットとデメリットがあり、どちらが最適かは、その時の状況や長期的なビジョンによって異なります。私たちは、実際にこれらのビジネスモデルを試し、その経験から得た教訓を共有したいと思います。
星野リゾートとアパホテルをベンチマークにした理由
ビジネスを始める際に、私たちは日本の代表的なホテル運営会社である星野リゾートとアパホテルをベンチマークにしました。これらの企業は、それぞれ異なるビジネスモデルで成功しているため、その違いを理解することが私たちの戦略を決める上で非常に参考になりました。
星野リゾートのアプローチ
- 運営特化型: 星野リゾートは、運営特化型のビジネスモデルを採用しており、土地や建物を所有せずに、リース契約を通じて施設を運営しています。このモデルは、少ない資本で事業を拡大できる柔軟性があり、リスクを分散させることができます。
- スピーディーな事業展開: 資産を所有しないことで、迅速な事業展開が可能になり、新しい市場への進出も容易になります。また、サービスの質に集中することで、顧客体験の向上に注力しています。
アパホテルのアプローチ
- 不動産資産型: 一方で、アパホテルは土地と建物を所有し、それをもとに事業を展開しています。このビジネスモデルは、長期的な資産価値の向上を目的としており、所有する不動産の価値を高めることで、安定した収益を確保しています。
- 資産価値の最大化: アパホテルは、不動産価値を高めるために、立地選定や建物の設計、サービス提供において戦略的な投資を行っています。これにより、地域の発展とともに資産価値を増やすことができるというメリットがあります。
運営特化型のビジネスモデル
運営特化型の特徴
運営特化型ビジネスモデルは、ホテルや旅館の運営に特化し、土地や建物の所有権を持たずに運営を行うスタイルです。このアプローチにより、初期投資が少なく、迅速に事業を始めることが可能です。運営に特化することで、サービス品質の向上や顧客体験の改善に集中することができます。
メリット:
- 資本効率が高い: 少ない資金で事業をスタートできるため、資本効率が高いです。
- 柔軟な事業展開: 市場の変動に迅速に対応でき、需要に応じてサービス内容や価格設定を調整できます。
- リスク管理がしやすい: 不動産を所有しないため、資産価値の変動リスクを回避できます。
デメリット:
- 長期的な資産価値の向上が難しい: 不動産を所有していないため、資産価値の上昇から利益を得ることができません。
- 賃貸料のコスト負担: 賃貸料の増加が収益性に影響を与える可能性があります。
不動産資産型のビジネスモデル
不動産資産型の特徴:
不動産資産型ビジネスモデルは、土地や建物を所有し、それを運営することで収益を上げるスタイルです。初期投資は大きいものの、長期的な資産価値の上昇と安定した収益を期待することができます。また、不動産資産を担保にすることで、追加の資金調達も可能です。
メリット:
- 資産価値の向上: 不動産を所有することで、地域の発展や市場の成長に伴い、資産価値が向上する可能性があります。
- 安定した収益: 賃貸収入や宿泊収益により、安定した収益を得ることができます。
- 資金調達の柔軟性: 不動産を担保にすることで、銀行からの融資など資金調達が容易になります。
デメリット:
- 初期投資が大きい: 不動産購入には多額の資本が必要で、資金調達が難しい場合もあります。
- 市場の変動リスク: 地域の景気変動や不動産市場の影響を受けやすく、資産価値が下がるリスクがあります。
- 現金化の難しさ: 不動産は流動性が低く、急に資金が必要になった場合に現金化が困難です。
私たちの選択とその結果
私たちの設計事務所では、不動産資産型のアプローチを選び、実際に古民家を購入して民泊運営を始めました。この選択の背景には、長期的な視点での資産価値の向上と安定収益を目指すという狙いがありました。
選択の理由:
- 地域資産の活用: 地域の観光資源を活かし、古民家をリノベーションして宿泊施設にすることで、地元の文化や伝統を体験できる特別な宿泊体験を提供することができました。
- 設計事務所としての強みの発揮: 自社で設計・施工した施設をショールームとして活用し、顧客に直接設計のクオリティを見てもらうことが可能です。
得られた結果:
- 成功した点:
- 長期的な収益源の確保: 不動産を所有することで、宿泊料収入だけでなく、不動産価値の上昇という形で長期的なリターンを得ることができました。
- 設計事務所のブランディング強化: 自社施設を通じて設計のクオリティを顧客に体感してもらうことで、ブランディングに成功しました。これにより、設計依頼が増加し、新たなビジネスチャンスが生まれました。
- 課題となった点:
- 初期投資の大きさ: 不動産購入と改装には多額の初期投資が必要であり、資金回収には時間がかかることが課題となりました。
- 市場変動のリスク: 地域の景気変動や観光需要の減少により、資産価値が下がるリスクが常に存在することも課題として挙げられます。
- 現金化の難しさ: 資金が急に必要になった場合でも、不動産を現金化するのは難しく、流動性の低さが課題です。
ハイブリッド型の可能性
運営特化型と不動産資産型のどちらも経験した結果、私たちは「ハイブリッド型」のビジネスモデルにも目を向けるようになりました。ハイブリッド型とは、運営特化型と不動産資産型の両方のメリットを組み合わせたモデルです。
ハイブリッド型のメリット:
- 柔軟な事業展開: 自社所有の物件を運営しながら、他の物件の運営委託も行うことで、リスクを分散しながら収益源を多様化できます。
- 収益の最大化: 自社物件からの収益に加えて、運営委託物件からの収益も得られるため、収益の最大化が図れます。
- 設計事務所の強みの発揮: 自社所有物件をショールームとして活用しながら、他の物件の運営を通じて設計・施工の実績を増やし、設計事務所としてのブランド力をさらに強化することが可能です。このアプローチにより、設計事務所としての事業拡大と、宿泊事業としての収益の両方を追求することができます。
実際やってみて学べること
ホテルや民泊のビジネスモデルを選ぶ際には、運営特化型、不動産資産型、またはその両方を組み合わせたハイブリッド型のどれを選ぶかが重要なポイントです。私たちは、不動産資産型のモデルをベースにビジネスを開始し、その過程でハイブリッド型の可能性を見出しました。
重要な教訓は以下の通りです:
- 最初の選択は、事業の特性や状況に合ったものであるべき: 星野リゾートのように運営に特化することで資本効率を高めるか、アパホテルのように不動産を所有して長期的な資産価値の向上を目指すか、自分たちの目標に合ったモデルを選ぶことが重要です。
- ビジネスモデルは柔軟に進化させることが大切: 初期の選択が絶対的なものではなく、状況に応じてモデルを調整し、ハイブリッド型など新しいアプローチを試みることも有効です。私たちは設計事務所としての強みを活かし、不動産資産型と運営特化型を組み合わせることで、新たな収益モデルを構築しました。
- 学びと改善のプロセスを重視する: どのビジネスモデルを選ぶにしても、実際に運営してみることで得られる経験とフィードバックをもとに、常に学び、改善していくことが成功への鍵となります。最初から完璧な戦略を立てることよりも、行動を起こし、その結果から柔軟に適応することが大切です。
結論として、運営特化か不動産か、あるいはその両方かの選択は、その時点の状況や目標に応じて最適なものを選び、実行に移し、その後の学びと改善を重ねることが最も重要であると言えるでしょう。どちらのアプローチも成功への道であり、自分たちの強みを最大限に活かすことが大切です。
このようにして、私たちはホテル・旅館業界でのビジネスモデルの選択と実行において、独自の道を切り開いてきました。これからも柔軟な発想と実践的なアプローチで、新たなビジネスチャンスを探っていきたいと考えています。
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