はじめに
ホテル業界では、客室の改装工事が収益向上に直接的な影響を与えることが知られています。しかし、客室だけでなく、ホテルの共用部である廊下のデザインもまた、施設全体の印象を大きく左右します。この記事では、ホテルの廊下デザインがどのように客室全体のベースアップに寄与し、最終的には稼働率や口コミにどのような影響を与えるかについて探ります。
この記事で解決する問題は?
- 古くなった旅館ホテルの建物は、全体的なイメージダウンにつながります。 客室が多い施設であれば尚更、全て改装するのに巨額な投資が必要になります。
- では、どこから手をつければいいのか? 限られた予算で最大の効果を得るためには、廊下などの共用部を改装することが効果的です。
なぜこの記事にするのか?
私は、実際にいくつかのホテルと旅館で廊下の改装プロジェクトを手がけた経験があります。ある旅館では、古びた廊下が全体のイメージダウンに繋がり、特に若い世代の宿泊客の減少が問題となっていました。しかし、限られた予算の中で全ての客室を改装するのは現実的ではありませんでした。
そこで提案したのが、まずは廊下の改装から始めること。廊下の壁紙を明るくモダンなデザインに変え、照明を調整し、足元には柔らかいカーペットを敷きました。その結果、旅館全体の印象が一新され、訪れるお客様の口コミも「とても清潔でモダンな雰囲気」「廊下が素敵で、客室への期待が高まった」というポジティブなものに変わっていきました。
改装の効果を実感
廊下の改装後、リピート客が増えただけでなく、SNSでも「綺麗な旅館」として話題になることが増えました。これは、実際に宿泊するお客様が感じた新しい体験が口コミとして広がり、新規のお客様の訪問に繋がった結果です。廊下という共用部の改装が、施設全体のイメージをアップグレードし、集客力を高める大きな効果を生んだと実感しています。
実行すべき重要な三つのポイントは?
1. ホテル旅館の施設自体に、商品力はあるのか?
まずはホテル旅館自体に魅力がなければいけません。これは空間だけでなく、景色が良い、観光地に近い、温泉の質が良いなどの要素を含みます。もし施設に十分な商品力がない場合、客室改装が最優先となります。しかし、ある程度の商品力があれば、共用部の改装工事も視野に入れるべきです。
2. 客室数がどのくらいかによって、客室数が多い廊下は効果的
共用部で最も印象に残りやすいのがエントランスロビーですが、改装コストが高くつくこともあります。その場合や、施設のブランドイメージが確立されていない場合は、まず廊下の改装を検討するべきです。特に、客室数の多い廊下から改装を始めると、コストパフォーマンスが高く、効果的です。複数階ある場合は、全体のデザインゾーニングを行い、2〜3ゾーン以上を改装して、デザイン効果を比較することをお勧めします。
3. テーマ設定とブランドイメージの統一
例えば、海の近くであれば、海や波、自然、リゾート、空などをイメージさせるテーマを設定します。カラーとしてブルーを基調にしても良いですが、最終的には「開放感」や「リラックス感」を演出し、顧客にどのような印象を与えたいかをゴールに設定します。各ゾーンのコンセプトは、ホテル全体のブランドイメージやコンセプトと関連づけることで、統一感を持たせます。
実績の具体例:ホテル旅館の廊下デザイン
和モダンな空間デザイン
あるホテルの廊下では、書家にその立地の風景をイメージさせる書を書いてもらい、和モダンなデザインでまとめました。これにより、日本の伝統と現代的な感覚が融合し、訪れるお客様に特別な体験を提供しています。
海をテーマにした廊下
別の旅館では、海をテーマにした廊下を設計しました。押し花アーティストに制作を依頼し、その立地の雰囲気を反映したストーリー性のあるデザインに仕上げました。このように、アートを活用して立地特有の魅力を引き立てることで、訪れるお客様に強い印象を与えています。
日本の伝統を取り入れた廊下
また、日本の伝統的な和の要素をそのまま空間に落とし込んだ廊下もあります。ホテル旅館の歴史を伝えるために、木材や和紙、竹などの素材を使い、伝統的な日本の雰囲気を再現しています。これにより、訪れるお客様に歴史的な価値を感じさせ、滞在の深みを増しています。
森の小道をテーマにした廊下
さらに、古く暗い廊下のイメージを払拭するために、全室オーシャンビューの客室を持つホテルでは、アプローチに当たる廊下を少し暗めにし、自然を感じられる森の小道のようなテーマでデザインしました。これにより、お客様は非日常的な雰囲気を味わいながら、リラックスした気分で客室へ向かうことができます。
廊下デザインが与える影響
視覚的な印象とブランドイメージの強化
廊下は、ホテル全体の第一印象を左右する重要な要素です。明るい照明、モダンなアート、落ち着いた色調の壁紙など、廊下のデザインは訪れた人にホテルの雰囲気を伝える役割を果たします。廊下を通ることで、顧客の期待感が高まり、客室への期待も高まります。さらに、廊下デザインはホテルのブランドイメージを強化する役割も果たします。例えば、高級感を重視するホテルであれば、洗練されたデザインの廊下がそのイメージを補完します。
体験の一部としての廊下
廊下は単なる通路ではなく、滞在体験の一部です。廊下を歩くことで、そのホテルが提供する体験の全体像が顧客に伝わります。安全性や快適性を感じる廊下デザインは、顧客に安心感を与え、リラックスできる環境を提供します。特に、廊下が広々としていて、アートや装飾が施されている場合、顧客はその空間自体を楽しむことができます。廊下は単なる移動経路ではなく、顧客に新たな発見や驚きを提供する空間としても機能するのです。
安全性と快適性の確保
適切な照明やカーペットの選定、壁のデザインなどが、心理的な安心感を提供します。これらの要素が整っていると、顧客は廊下を通る際にも快適さを感じ、ホテル全体のイメージが向上します。また、滑りにくい素材の床や明るい照明の配置は、安全性を確保し、事故を防ぐ効果もあります。安全で快適な廊下は、顧客のストレスを軽減し、滞在全体の満足度を高める要因となります。
口コミと稼働率への影響
口コミの影響力
廊下デザインが顧客の印象を左右し、それが口コミに大きく影響を与えることは少なくありません。例えば、「廊下がとても素敵で、ホテル全体の印象が良かった」という口コミが増えることで、ホテルの評判が上がり、稼働率の向上につながります。実際に、廊下を改装したことで口コミ評価が上がり、リピーターが増えたというホテルも多く存在します。
稼働率の向上と客単価の上昇
改装された廊下は、新規のお客様に対しても「ここに泊まってみたい」という気持ちを喚起し、その結果、新しい顧客層を開拓することができます。廊下デザインが稼働率に与える影響は、目に見えないものの、その効果は非常に大きいと言えます。さらに、廊下デザインがホテル全体の印象を向上させることで、顧客はより高い料金を支払うことに抵抗を感じなくなり、結果として客単価の上昇にも繋がります。
成功した廊下デザインの要素
デザイン要素の選び方
成功する廊下デザインの鍵は、照明、アート、色彩、素材の選び方にあります。例えば、明るい照明と落ち着いた色調の壁紙を組み合わせることで、顧客にリラックスした雰囲気を提供します。また、モダンなアートを取り入れることで、高級感を演出することも可能です。廊下に施されたデザイン要素が、顧客にどのような印象を与えるかを考慮し、選定することが重要です。
テーマやストーリーを持たせる
廊下にテーマやストーリーを持たせることで、顧客はそのホテルでの滞在をより特別なものとして感じることができます。例えば、地元のアートを飾ることで、その地域の文化を感じさせるデザインにしたり、自然をテーマにした装飾を施すことで、リラックスできる環境を演出することができます。テーマ性のあるデザインは、顧客の記憶に残りやすく、再訪の動機にもつながります。
最新のデザイントレンドの取り入れ
最新のデザイントレンドを取り入れることで、廊下デザインをより魅力的にすることができます。例えば、環境に配慮した素材を使用したり、スマート照明を導入することで、モダンでエコフレンドリーなイメージを演出することができます。トレンドを意識したデザインは、現代の顧客のニーズに応え、競争力を高める要素となります。
改装の具体的なステップ
改装計画の立て方
改装を計画する際には、まず現状の問題点を把握し、改善すべきポイントを明確にすることが重要です。次に、改装の目的と目標を設定し、それに基づいてデザインコンセプトを決定します。また、改装のスケジュールや予算を事前にしっかりと計画し、無理のない範囲で進めることが成功の鍵です。
デザインの実施と管理
デザインが決まったら、施工会社と連携して改装を進めます。この際、予算内で最大の効果を発揮するための工夫が必要です。また、施工中も進行状況を管理し、予定通りに進めることが重要です。施工後には、必ず仕上がりを確認し、必要な修正を行うことも大切です。
改装後の評価とフィードバック
改装が完了したら、顧客からのフィードバックを収集し、その結果を元にさらなる改善を行います。特に、口コミやSNSでの評価をモニタリングし、改装の効果を検証することが重要です。顧客の声を反映させることで、さらに満足度の高い施設を目指すことができます。
何を伝えるかを一言で (結果何が改善されるか?)
- 結果として、お客様のホテル旅館に対する印象がとても変わります。 それは、その廊下に面する各客室に対して、イメージ向上につながっていきます。EVホールから廊下を通り、客室に至るアプローチの世界観をつくることで、その客室のイメージが数段アップするわけです。
- 他の改装していない客室と客室単価を上げるのは中々ハードルはあるかもしれません。 客室改装しているわけではないので、具体的な数字は中々計りづらい計画ですが、お客様の印象をよくして、口コミから全体の稼働率向上を目指すことが可能です。
結論
廊下の改装工事は、施設全体のイメージを向上させ、悪い口コミを減らし、良い口コミを増やす効果があります。これにより、リピート客や口コミを見た新規のお客様が増え、結果的に稼働率の向上につながります。ホテル全体の印象を改善したいと考えている方は、ぜひ廊下デザインの見直しを検討してみてください。廊下デザインの改善は、目には見えにくい効果ですが、その影響は計り知れません。稼働率を向上させるための一つの手段として、廊下のデザインに目を向ける価値は十分にあると言えるでしょう。
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